中国料理の食材は多種多様、
調理法や調味料は実に多岐に及ぶ。

中国四川省ピーシェン豆板醤製造所にて
海老チリソース:中国料理の人気メニューのひとつ。華市では、海老の殻を時間をかけて油で煮込んだシャー油を使う。赤みは豆板醤とシャー油の海老の色なのだ。香ばしい海老の匂いもチリソースに封じ込められる。
蟹身のクリーム仕立:ほぐしたズワイカニの身と卵白を牛乳に混ぜ油で揚げる。
あっさりとした味でふんわりとした食感が女性に好まれる。油の温度は高すぎても低すぎてもいけない。経験からくる絶妙なカンが要求される。

人生も半ばの三十五の男に料理の味など語れる訳がない。などとのたまう仁には、某有名中華料理店へお出で願うとして、飽くことのない探求心を持ち続けている料理人の味をと思えばここ華市がいい。「究極の味、本場の味、と言う言葉は疑問ですね。」
「ただ自分ならばこうする、といえるかどうかが料理人というのかな。禅問答じゃないから、やはりお客さんがおいしいと言ってくれる言葉がうれしいですよ。」

オーナーシェフの山下氏は四川飯店で修業したのち、ここ湖東町に店を構え五年になる。独立してからは、毎年中国に出かける。
当然、観光客を相手にする料理店には行かず、その土地の人が行くような店に足を運ぶ。やはり食の醍醐味は、その地の気候や風土、人といったものに出会わないと味わえないという。中国では料理のことを「菜」という。「四川菜」は北方系の北京菜、東部系の上海菜、南方系の広東菜と並ぶ、中国料理の四大系統の一つで、中国の西部、長江(揚子江)の上流一帯の料理である。四川省は、内陸部で山あり川ありの土地柄だが、肥沃な盆地をもっているため、農畜産物は豊富で、食材は多種多様だ。そして調理法や調味法は他省にない独特なものを多くもっている。四川菜の味は、酸(酸味)、甜(甘味)、苦(苦味)、辣(辛味)、麻(ピリッとした味)、鹹(塩味)といったものが、料理の中に色、香りとともに三味一体となっている。その四川菜の味のベースといっても過言ではない調味料に、豆板醤がある。山下氏も昨年中国に出かけた折、その製造を見てきた。
「今まで豆板醤と思っていたものとは、まったく違いましたね。辛さにもこくがあるんだ、と言うこと教えてもらいました。」
ピーシェン豆板醤は砕いたソラ豆と唐辛子を塩づけし発酵させた中国味噌だが、一年ものは中国で消費され、2年ものは日本に輸出される。2年ものは熟成されてマイルドな辛さになる。そのピーシェン豆板醤で味付けした華市の麻婆豆腐は、四川山椒のピリッとした味と香ばしさに良く合う。だがそうしたピーシェン豆板醤が全ての料理には使えない。例えば、海老チリソースなどは辛さ、そして料理の色など点でむかないと言う。当然の事ながら、いかにして日本人の口にあわすかが料理人の腕なのだろう。
ともすれば中国料理は、油っこい、とか辛いという誤解が多い。自家菜園を持ち地元の新鮮な食材の仕入れを心掛けている華市で、四川料理の味わいを堪能してほしい。